日本に漂着したフレンチ画家 Ousmane 絵を描く意味とは

表参道で出会った、とあるフランス人ペインター “Ousmane”。
作品、そして彼自身から放たれる強烈な存在感の奥に潜む、表現活動の原動力に迫る。

出会い、そして、インタビューに至るまで

2019年3月、筆者が、表参道のCommune2nd (9月いっぱいで一時CLOSE、10月末にリニューアルOPEN予定) の中にあるIKI-BAにてDJをしていたときのこと。とある男性が、圧倒的なムードを放ちながら、飾られている絵を眺めていた。その姿を目にし、思わず話しかけた。それがOusmaneとの出会いである。
彼は画家で、今日本で生活をしている。
それから我々は意気投合し、彼は画家として、私は踊り手として、共にパフォーマンスをするようになった。
彼のエナジーに一頻り触れた今、改めて、彼の今日に至るまでの轍、そして脳内を探るべく、インタビューを敢行した。

フランスでの少年時代

Ousmaneはフランスの郊外、ストラスバーグで生まれ育つ。幼少の頃から絵を描くのが好きで、アートに強く興味を持っていた。高校の時点からアートに特化した学校に通いたかったが、家族や周囲の人間から強く反対され、通常の高校に入学(ハリー・ポッターの作者 J.K.ローリングと同じ学校だそうだ)。しかし、とにかく求める学びの環境とは程遠く、学校の教師と喧嘩をし、1年で学校を辞める。
その後、アートスクールに再度入学。音楽やストリートカルチャーにも強く興味があったことから、学校とは別に”HipHop Collective”というクルーに属し、イベントのオーガナイズを頻繁に行っていた。その分、学校はまた休みがちな生活であったが、日本でいうところの生徒会長のようなポジションをとり、うまく学校とも付き合いながら、パッションの向くままに”やりたいことをやる”生活を送った。学校では、主にウェブデザインやプリントデザインについて学んだ。

Ousmaneはインタビューを受けながら、インタビューをしている私を描いていた。

ウェブデザイナーに従事、そしてお告げ

卒業後、彼はヨーロッパのオンライン事業の大手”FAMILY”に、ウェブデザイナーとして務める。勤務地はパリ、2年間従事する。

9月の水曜日(という記憶の仕方をしているようだ)、彼の心が彼自身に語りかけたそうだ。”Hey do you want to become an ARTIST? (ねぇ、あなたはアーティストになりたいんじゃなの?) ”
その出来事の少し前、Ousmaneの上司がお世話になっている占い師(コンサルのような存在だったそうだ)が会社に訪れ、Ousmaneにむかって”You will become a big artist (きっとあなたは偉大なアーティストになるよ) ” と言った。話を聞いたそのときは茶化すような気持ちで、真剣に聞いていなかったが、いくつか言われた中で、数週間後に的中した事柄があり、占い師の言葉が急に真実味を帯びてきた。そして、きっと潜在的に眠っていた彼自身の意欲が湧き上がり、彼の心が喋り出したのであろう。”Hey do you want to become an ARTIST?”

世界の旅から日本漂着まで

心のお告げがあったその日に会社を辞め、フリーランスに転向。それから世界中を旅して回る。リスボンから始まり、ベルリン、ロンドン、バルセロナ・・・とにかくヨーロッパ内は少なくとも数えきれないほどの都市を巡った。旅をはじめたころは、特に”画家になる”と決めていたわけではなかったが、あらゆる地で過ごす中で、幼少の頃に最も好きであった”絵描き”に立ち戻った。

ベルリンで、酔っ払って道を歩いているとき、たまたますれ違った日本人と会話が始まり、「日本にもおいでよ!」と言われ、それがきっかけとなり、Ousmaneは初めて日本を訪れる。また酔って道を歩いているところに、たまたま目に入ったファッションストアをドアノック(夜遅い時間だったので当然閉店している)。運良くも、店長が残っていて、自分が絵を描いていることを伝え、手元にあるもので作品を見せると、是非オーナーに見せたい、と話が進展。
そのブランドは、”COTE MER”。オーナーで且つデザイナーの佐藤氏に実際に会って作品を見せたところ、シルクスクリーン領域におけるデザイナーを任されることになる。

ブランド側は、アーティストとしてのOusmaneもサポートしてくれ、2017年9月、彼は日本において初のエキシビションを、COTE MERの店内にて開催することに。非常に大きなキャンバスに描いた作品だったそうだが、瞬く間に全ての作品が売れ、エキシビションは大成功を納めた。

世界を旅しつつも、日本からの依頼を受けたり、或いは日本にてエキシビションを開催したり、という生活だったが、2018年9月日本に移住。元来、日本のアートの観念に心を惹かれていたとのことで、彼自身のアートライフを向上させる為、日本のアートを学ぶことが必要なことだと考えたそうだ。

筆者撮影 Ousmane エキシビションにて @FUKAGAWA GARAGE (Apr 30th 2019)


なぜ、描く?

なぜ絵を描くのか。彼は「自由を得るため」だと答えた。
MovementはArtになり、Joy (よろこび) は人々を自由にする、人々の心にJoyを生むようなArtをつくり、人々、そして自分自身を自由にする。そんな思想を語ってくれた。
また、Ousmaneは色に強いこだわりを持っている。”Colours are energy and hypnotize people strongly. That’s why I use strong colours. (色はエナジーであり、人を強く催眠にかけるほどに凄まじく影響を与える。だから僕は強い色を作品に用いるんだ。)”

日本とOusmane’s ART

彼にとって日本という国はどういう存在なのか。

Ousmaneは国籍としてはフランス人だが、両親は共にセネガル出身。日本とセネガルに宗教感覚で共通点があることを教えてくれた。
セネガルでは、イスラム教とキリスト教が混在しているそうで、そしてそれが共存している。そうすることで、”なにの宗教か”より慣習そのものの方に馴染みをもっているよう。生き方の共通感覚のようなものをもって共同体が成り立っている点で、日本が両親の生まれ地に通ずるものがあると感じているとのこと。
また、自身の母国であるフランスに関しては、”職人気質”が日本に共通しているとOusmaneは感じている。
しかし同時に、当然、日本にしかない美的感覚に触れ、学ぶことを目的に、いま彼は日本にいる。現在、浮世絵に強くインスピレーションを得ながら、筆、墨、和紙などを用いて、独自の表現手法を繰り広げている。そこには、先に記した”色”も確かな存在感を放つ。日本古来の感覚では結びつきにくい彼自身のカラーセンスを掛け合わせ、衝動的なモーメントを、Ousmaneならではの”侘び寂び”によって表現する。

見据える先にあるものとは

Ousmane はSNSに作品を載せることをやめたと話してくれた。展示会やアトリエなど現場で作品に直接触れてもらうこと、或いはライブパフォーマンスでその瞬間に生まれるエナジーを感じてもらうこと。そこに触れた人の心に直接触れることができれば、その人の心に”Joy”が生まれ、自由になれるのでは。そんな絵が描きたいと。
コンテンポラリーは昨今”トリッキー”になっている、とOusmaneは言う。”このテーブルのその角にグラスを置く、これで作品と言い切ってしまえば、そうなってしまう。だからこそ本当に神聖なものを見つけたい。アートでそれを見出したい。”
また、少年時代を回顧し、”もしも今学生に戻って学び直せるなら、心理学や社会学を勉強したい。アート表現の更に奥にある根源的なもの。それを学んでいれば、もっともっと強烈で明確なコンセプトを持てるだろう。確固たるコンセプトを手にする為に絵を探求しているかもしれない。そのコンセプトを手にできたら、もはや絵を描く必要はなくなるのかもしれない。” そうOusmaneは語る。

彼が追い求める”コンセプト”と出会う日まで、少しでも多くの人が、彼から放たれる生きたアートを、現場で堪能してくれたら、とそんな思いに駆られるのである。


= イベント情報 =

“G. O. S” exhibition

Produced by Dear world Inc,
Curated by Tokyo was here and Ousmane Bâ

2019, November 02(sat)-November 10th (sun)
Opening reception Saturday 2nd November
6pm-9pm
Fukagawa garage
Adresse
2-2-3 Fukagawa koto-ku
Tokyo Jap

Tokyo circle of contemporary artist, born of a controversy around
of the place of modern Neo art in contemporary society.
Animated by the common vision of a free and eclectic creation.They
gather around the paradigm yet simple, how to resacralize the culture.
To this end they initialed under its initials G.O.S, as the children
of a generation in response to overconsumption and communication
of images increasingly chaotic. Their meeting point, Tokyo results
from a common point for esotericism, Japanese mysticism
and Oriental wisdom.
Detaching cultures, they offer a rereading of the history of post-modernist art without remaining in the nostalgia of the so-called «classical»
art. They apply to find the holistic characters of productions at the
crossroads of painting, performance, photography. GOS is the result
of an internet counter-culture slammed on the ground, between avant
garde and transmission.



Oct 22nd / 2019

Photography of top: Solène Ballesta
Photography other: Jasmine
Interview & Write: Jasmine

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