
CCS records 色に共感し、ボーダーを超え続けるクルーの正体 part3
近年活発な動きを見せている福岡のカルチャーシーンにおいて、独特な色彩を放ちながらその存在感を拡大させているクルーがいる。
CCS records。音楽、アート、グラフィック、アパレル、ビートメイキングといった複数のジャンルを横断的にカバーする3つのセクションを立ち上げ、それぞれをミックスさせながら活動を行う表現集団だ。
突如として福岡のカルチャーシーンに現れ、それぞれの活動で影響力を拡大させている一方、CCS recordsそのもののルーツや全体像は謎に包まれている。今回、そんなCCS recordsのレコーディング現場にTRENCHANTディレクターのJasmine が潜入。あらゆる表現のボーダーを飛び越えて活動を続ける彼らのルーツ、思想を紐解くべくインタビューを行った。第3回となる今回は、レーベル全体の共通項やコンセプト、今後のビジョンに迫った。
共通項としての「カラー」×「サグみ」
―CCS records全体やメンバー間において共通しているコンセプトであったり、この部分がDNAだなというポイントはありますか?
BUGS :
そう言われると難しいな…。活動として、がっつり共有するべきコンセプトを作っているというわけではないんです。
pen :
共通点と言えば、俺ら全員が自分大好きクラブなんですよ。それぞれが「俺、カッコいい」と思ってるやつらが4人集まった感じというか。
―なるほど。でもそうじゃないと、ラップはできないですよね。
BUGS :
それはあるな。よく割れんな、とは思いますね。4人ともこんな感じで。こんな4人がしっかりクルーでやってるっていうのはすげえなって思います(笑)。bill :
bill :
でもほんと、そういう話ばっかりやもんね。今日の撮影でも、誰かが「この写真めっちゃイケてない?」って言ったら大体自分自身の写真やし(笑)。
でもそれぞれが言ってることとか、感覚をお互いに理解できるところが間違いなくあって。それは大きいと思いますね。
―その熱量が、クルーとして等しく高いというのが良いんでしょうね。誰かだけが高くても共有できんし。
BUGS :
そう!全員がその熱量を持ってるから、まったくストレスがない。
それぞれの活動に共通するルールはない。ただそれを飛び越えたところで、「イケてる」ことに対する感覚、熱量を共有している。枠を感じさせない活動の広がりと、その中にどこか感じさせるCCS records独特の空気感は、このメンバー間の共感に根ざしているものなのかもしれない。
メンバーが共有する感覚というポイントにおいて、印象的なシーンがあった。インタビュー中、BUGSがふと呟く。
「ちょっと、色味足そう」
顔をあげると、ベッドに置いてある水色のカーディガンを、おもむろに手に取り、羽織る。
pen :
あ、そう。「色味」はあるよね、感覚として。
BUGS :
うん、俺らと言えばカラー、みたいなところはある。ハッ…と笑顔になる色味が好き。
―確かに、CCSのカラーセンスは凄く印象的。週末CITY PLAY BOYZのインスタで、微妙にトーンの違う紫の画像をひたすら置く、みたいなことをされていたりとか。
pen :
僕、紫がめっちゃ好きなんですよ(笑)。
色に関して言うと…。たとえば、アーティストって「この人といえばこれ」っていう絵とか、表現があると思うんです。そう考えたときに、自分には「これがpen publicだ」って分かるような絵があるわけじゃないと思っていて。ただ、色だけは(持っている感覚が)あるな、と気づいて。それは単色での話だけではなく、カラーコンビネーションも含めて。
この感覚を人に共有するのって凄く難しいことだと思うんですけど、CCSのクルーではそれを共有できる気がしていて。だからこそ作品とか、レーベルのイメージにもこういう色味を出せると思うんです。
―色彩感覚の共有がキーになっているというのは面白いです。そういうところにハマるのが、さっき言っていた「笑顔になる色味」だったりするのかな。
BUGS :
そうですね。言葉にしづらいポイントではあるんですけど。
pen :
「サグみ」ってやつかな。
―サグみ、なるほど!「サグ」をそういうニュアンスで捉えるのか。
BUGS :
俺らにとっての「サグ」はそういうことかもしれないです。
pen :
紫のカラーグラデーションの中から、「サグ紫」を探したりとか。やりすぎて、紫がだんだん紫に見えなくなってきてるんですけど(笑)。
―紫のゲシュタルト崩壊(笑)。
pen :
でも、そのグラデーションの中から「ここがサグ紫」というポイントを、みんなは分かってくれるというか。
―その感覚、凄く面白いです。私自身も、例えばダンスセッションをしたりする中で「この人、分かっとるな」という感覚があったりする。一段深いところで、同じものを見ている感覚というか。おそらくそういう類の一つのバロメータとして、CCSの中でキーになるのがカラーであり、「サグ」への共感であると。
pen :
そう。それこそ、今日(Jasmineと)対面したときに、着てるシャツの色とかインナーとの合わせとか見て「こいつもサグ側の人間だな」って思ってるんですけど(笑)。
―それは凄くうれしいです。もはや「サグ」を褒め言葉と受け取ってしまっとるんやけど(笑)。
BUGS :
それこそ、今日撮ったやつ(本記事トップの写真)とかまさにそう。これ、建物全体がサグ紫なんですよ。前から「絶対ここで撮影したい」って言ってて。
pen :
サグ紫と配線の感じがいいんですよ。でも写真では伝わりづらいかな…。難しいニュアンスなんですよね。こっちの目からみるとサグだけど、そっちからみると違う、みたいな。非言語の表現だけど、深いんですよ。
―非言語だけど、そこに意思やニュアンスが出せる。共通項としての「カラー」。面白いです。

CCSの体現するカルチャー、その先に見るもの
―これまで、CCSのルーツや活動、共通項などを伺ってきました。そのうえで、これから先CCSとしてこんな方向に展開したい、というものはありますか?
具体的なプランなのか、抽象的なビジョンなのか、というところも含めてもしイメージするものがあれば。
BUGS :
海外で何かやりたいな、というのはありますね。僕らはやっぱり海外志向な部分があって。そこにはライフスタイルとしての音楽やアート、カメラといった表現があるし。
―海外に行きたいと思うとき、その一歩手前には何らかの動機があるのかな、と思います。たとえばそれが「とにかく外の世界に踏み出したい」という衝動であったり、あるいは特定の国や地域をイメージして「ここに向けて作品を届けたい」という想いであったり。CCSを海外志向にさせるものって、何なんでしょうか。
BUGS :
そうですね…。考えてみると俺とNADOは特に、彼ら(pen、bill)がアメリカ横断して持って帰ってきたものからの影響が大きいのかなと思いますね。ほんと、すげえ楽しそうに旅のことを話すんですよ。
―アメリカ横断は、どんなルートで行かれたんですか?
pen :
ロスからスタートして、テキサスあたりを通ってニューヨークまで。
―なるほど。アメリカではどんな影響が大きかったと思いますか?具体的な音楽やアートから人が持つ雰囲気まで、色々な違いはあると思いますが。
bill :
カルチャーですね。たとえばpen君みたいに絵を描きながら歌を歌うってことに、僕ら4人は全く違和感がなくて。急に絵を描いて持ってきてもフラットに「良いじゃん」って思える感覚。それこそ、そういうアーティストって海外にはいっぱいいると思うんです。だから、アメリカではそういう雰囲気、価値観に浸かったというか。そこと、自分たちを重ね合わせた時間でしたね。
―なるほど。確かにpen君みたいに絵を描きながら歌を歌うっていうアーティストって珍しいですよね。そこが存在を謎にさせているところがある。だからこそ、今の話は凄く納得。どこに何のボーダーも無い、CCSの活動にも通じる感覚。
BUGS :
そうやなあ。超ボーダーレスと思う。
pen :
結局は俺か、俺じゃないかというだけだと思っていて。こうやってみんながいろいろやってると、「割合的にはどれが何パーセント?」的なことを聞かれるんです。それを聞かれると、マジで中指立てたくなるんですよ。そういう見方がまず無いなと。それも一方では真っ当な見方なのかもしれないんですけど。
みんなも含めて、俺らはただバカやってるだけなんで。そういうところの価値観っていうのは、アメリカ行って強く感じた気がします。
―それは、強く共感します。それこそ、とあるコアなセレクトショップのオーナーと話していた中で、「本当に新進気鋭のデザイナーが作る服って、それがたとえ服じゃなくても良かったんだと思う」みたいな話をしていて。
pen :
立体アートとしての一つの形、みたいな。
―そう。たまたま行きついたのが服だったというだけで、服に出会わなければ必ず別の手段で表現をしていたんだと思うし。表現手法はその時に出会ったもの、気が赴いたものというだけかもしれない。
BUGS :
確かに。俺もそんな感じやったしな。最初は服作って、そこから音楽に移って。
―また服をやるかもしれんし、みたいな。表現の方法を選ばないからこそ、その自然体がCCSの魅力になっているのかなと思います。
ジャンルを超えて作品を生み出すことに対する良い意味での「心理的ハードルの低さ」と、衝動からアウトプットまでの圧倒的なスピード感。CCS recordsが共有するカルチャーの根源にあるのは、「イケてる」という感覚に対する確信と、その熱量。
CCS recordsがこれからどこへ向かって進んでいくのか、それは分からない。分かるのは、彼らはこれからもボーダーレスに、鮮やかな色彩を放ち続けるのだろうということ。
すでに、次の動きも控えている。2019年9月4日、週末CITY PLAY BOYZでは新作アルバムがリリースされた。新たに送り出されるこの作品も、彼らのカルチャーを色濃く映し出したものであることは間違いない。
Interviewed by Jasmine
Edited by kohei
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